死神、ピザ屋に帰還/祝 ニンジャスレイヤーAoM物理書籍 2026/1/30発売!
ニンジャスレイヤーの現行シリーズであるAoM(エイジ・オブ・マッポーカリプス)の物理書籍版がついに刊行される運びとなりました。
これが本当に面白くて大好きなので、紹介記事を書いておきたいと思います。気になったらぜひ読んでみてください。
ニンジャスレイヤーとは
念のためニンジャスレイヤーの概要を書いときますと、X(旧Twitter)とnoteで連載を行っている奇特なweb小説です。
現実世界とは少しだけ違う歴史をたどった近未来を舞台に、歴史の闇からよみがえった怪人「ニンジャ」達の暗躍と、ニンジャを殺すニンジャ「ニンジャスレイヤー」の復讐の戦いを描く、サイバーパンクニンジャアクション小説ですね。
お話しそのものも普通に宇宙一面白いんですが、SNS上で連載してるという形式も現代的かつ他にあまりないもので、楽しみ方の感覚的にはweb小説とソシャゲの中間的存在という感じがします。
さて、ニンジャスレイヤーと言う作品は、先代の主人公フジキド・ケンジの物語(トリロジー)が2010年に当時のTwitter上で連載開始、コミカライズが同時に3作連載され、2015年にはトリロジーの第一部がだいぶ怪作なアニメ化をされるなど、メディア展開面でも大きな盛り上がりを見せていました。
ところが2016年のキングレコードの組織再編に伴って玉突き的にトリロジー第2部のアニメ化企画が中止となり、その頃からメディア展開は徐々に収束に向かう事となりました。
◇さて、連載15年を振り返れば様々な磁気嵐もありました。アニメ2期が決まったと伝えられ、専業になるべく翻訳チームがサラリマンを辞めたところ、突然スタチャが無くなって白紙になったり、AREA 4643をSteamで発売しようとしたら、「日本語がフルサポートされていない」などと言われたりなどです◇
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) 2025年8月8日
シャレにならないタイミングでの企画の中止だと思いますが、執筆陣はめげずに作家活動に打ち込み、フジキド編の完結後も新主人公マスラダ編(AoM)をスタートさせ、Twitterでの連載を継続しました。
さらにnoteの有料マガジン機能を使ったオンライン小説雑誌を構築、サブストーリーや設定解説を中心に膨大な量のテキストの執筆・公開を行い、生活と執筆の基礎となるファンコミュニティの確保・維持を達成しました。
こうして積み上げられた可燃性の文章カラテの膨大な蓄積に、いま再び火がつこうとしている、それがこの度のAoM物理書籍刊行というイベントになるわけです。
もちろん自分は継続的に連載を追いかけてるので、メディア展開があろうとなかろうとずっとおもしれえなあニンジャはという感想なんですが、とは言えXでの連載とnoteの有料サイトだけだと手を出しかねてる潜在的読者がいるであろうことは想像に難くありません。
この傑作シリーズが世に広く知られる機会が増えることは、誠に喜ばしいことであるなあと思う次第であります。
AoMという作品の特徴について
それでは、マスラダ編ニンジャスレイヤー、AoM(エイジ・オブ・マッポーカリプス)とはどんな作品なのか、あらすじと主要登場人物と作品の特徴を説明してみましょう。
【登場人物】
— ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer (@NJSLYR) 2025年12月23日
キタノ・スクエアの情報屋「ピザタキ」には、ヤバい情報屋「タキ」がいる。それから、意志を持ったオイランドロイドの「コトブキ」が。それだけじゃない。「マスラダ・カイ」……またの名を「ニンジャスレイヤー」が、いつだって睨みを効かせているぜ。 pic.twitter.com/3DqoK4AQxq
あらすじ
フジキド・ケンジの戦いから10年、当代のニンジャスレイヤーである青年マスラダ・カイは、幼馴染アユミの死の原因となった謎の超常存在サツガイの行方を追っていた。情報屋のタキ、アンドロイドのコトブキとの出会いを経て、マスラダの復讐の旅は世界へと広がっていく…!
主な登場人物
マスラダ・カイ:当代ニンジャスレイヤー。ピザタキに住み着いた機嫌の悪い猫。デリバリー地獄。高い感受性とふてぶてしさを兼ね備える。
タキ:情報屋兼ピザ屋。まあまあカスだが保護者適性の高さが発覚。ハッキングの腕は良いとこ一流半だが世間知や生き汚さを含む総合力で勝負だ。
コトブキ:親切で勇敢なアンドロイド。服が好き。膨大な旧世紀アクション映画ビデオを鑑賞しているうちに自我に目覚めた。
サツガイ:謎の超常存在。ニンジャの前に無作為にあらわれ、新しい能力を授ける。その行方を追う者はマスラダだけでは無い。
サツバツナイト:先代ニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジ。国際探偵を自称。すげえ強くてクソ真面目で出現エリアが広大。
ナラク:謎の大怨霊ナラクにとりつかれたものがニンジャスレイヤーとなるのだ。性格が悪くて物知りなおじいちゃん。
作品の構成
フジキド・トリロジーは時系列シャッフルで徐々に本筋に迫っていく独特の構成が特徴でしたが、AoMは普通に時系列で物語が進行します。
エピソード10話分くらいをまとめてひとシーズンとして章立てされており、現在シーズン5の連載中です。シーズン1~3はひとつながり感が強いですね。
この度書籍化されるのはシーズン1相当分ですが、テキストの量からして2分冊されるのではと予想していたのが1冊にまとまっていて、ボリュームはだいぶありそうです。
ただまあボリューミーと言っても結局は2冊分であって、web小説の書籍化で2冊同時刊行する事たまにありますけどそれが1冊になってるようなものだと思います。
また、上述の通りAoMのメインストーリー以外に膨大な量のサブストーリーが有料マガジンに存在しており、このなかから選りすぐりのめちゃ面白エピソードが再編成されて、各シーズンの合間に刊行されるのではなかろうかと予想しています。
作品の特徴
さて、ニンジャスレイヤーAoMの特徴、あるいは美点についてなんですが、広がったワールドと明確化したホームの対比にあると思っています。
ひろがるワールド
トリロジーの舞台はおおむね、貪婪と混沌の近未来都市ネオサイタマと、キョート共和国の地下型積層都市ガイオンに限られていました。
その10年後を描くAoMでは、ネオサイタマの歪んだ先進技術の流出と新資源エメツの発見により、世界中の主要都市がネオサイタマと同様に魔都へと変貌しています。
それぞれに個性的な世界の都市を次々に訪れていくワールドツアー性は、AoMの見所の一つと言えます。
さて、ニンジャスレイヤーと言うシリーズは近未来を舞台にしたサイバーパンクであると同時に、歴史の闇の中で暗躍してきたニンジャについての歴史伝奇でもあり、何がどうしてこうなったという歴史的背景への意識が意外なほど強い作品でもあります。
近年のエンタメにおける歴史×SFの想像力を持った作品群は2つの方向性があると思っておりまして、ひとつは『オルクセン王国史』をはじめとする異世界だけど地理が地球そのまんまな作品群、もうひとつは本邦のソシャゲ界の雄『Fate/Grand Order』のとくに第2部の主要な舞台となる「異聞帯」です。
オルクセン方面は「地理と国際関係」、FGO方面は「都市と歴史上の人物」が世界観の軸足になっていると思いますが、そうした両要素がグラデーションするなかに『汝、暗君を愛せよ』や『かくて謀反の冬は去り』といった異界化した歴史世界を描く作品群が存在しています。
都市を舞台としつつもそれが異聞帯のような完全に独立した小世界になっていないニンジャスレイヤーAoMは、上記の両要素間のFGO寄りの中間に存在しています。とくにAoMシーズン3ではメイン敵が実はニンジャだった明智光秀であり、異聞帯性が牙をむいていると言えるでしょう。
寄る辺なき若者たちの集まり
さて、ニンジャスレイヤーはある種の変身ヒーローものであると捉えても間違いのない作品ですが、児童向け特撮の定番である本拠地という要素は、フジキドが単独行動するトリロジーには存在していませんでした。
AoMにおけるピザタキはまさしくこの特撮番組の本拠地であり、店主のタキは『仮面ライダー』で言うところのおやっさんに相当します。
また、AoMで描かれる世界では、日本と言う国家はすでに崩壊しており、世界を領域的に区分する国家と言う枠組みが衰退、世界の各エリアで覇をとなえる大都市と世界を股にかける大企業がしのぎを削っています。
そうした秩序を保証する前提の失われた世界で、復讐者マスラダ・ストリートチルドレンあがりの情報屋タキ・主なきアンドロイドのコトブキの、身寄りを失った若者たちのチームでありホームとなるのがピザタキであるわけです。
こうした寄る辺なき若者たちのホームの描きは、『天気の子』や『チェンソーマン』の早川家まわりと同ジャンル性、同世代性を感じさせますね。
広がったワールドに対して明確化した帰るべきホームが対比され相互に強調する事、両者の間に存在する長い長い距離が、AoMという物語を奥深く、また鮮やかなものとしていると言えるでしょう。
まとめ
フジキド・トリロジーはアクション小説における金字塔的存在ですが、AoMもまたそれに勝るとも劣らない、力強い面白さと新鮮さを備えた傑作であり、こうしてピザタキというたいへん好感度の高い新主人公チームが世に広く知られる機会が出来たことが、うれしくてなりません。
また、ネットでつながる邪悪ニンジャサークル「サンズ・オブ・ケオス」のアホどもや、地獄よりカナダに出現して弱肉強食の帝国を築く明智光秀、人知を超えた魔神”リアルニンジャ”の同盟「ダーク・カラテ・エンパイア」など、この記事では書ききれなかった敵キャラやサブキャラの魅力、そして彼らの熱いカラテも、作品には詰め込まれています。明智光秀まわりはどうかしてるくらい面白いのでなんとか世に広めたい…!
AoMの最新シーズンであるシーズン5は、AoMで過去最長になる予定ですが、このままうまく進めば過去一で面白い傑作シーズンになる可能性が十分にあり、これからAoMを読みはじめるひとにも期待をもってこのシリーズを読み進めてもらえます。
太鼓判でおすすめできる、マジで面白い大傑作シリーズです。この機会にぜひ触れてみてください!
なお
フジキド・トリロジーはおおむね全話が無料で公開されていますので、前作主人公の長い復讐の旅について興味がある方は、だれでもここから読んでもらう事が可能です。
フジキド編は連作短編になっており各話の独立性が高いので、気になる要素やキャラが出てくる話だけピンポイントで読んでみても良いですね。
また、フジキド・トリロジーの第一部からエピソードを抜粋してうまいこと1冊にまとめてみせたリマスター版第一部が秋に刊行されていますので、ニンジャスレイヤーってどんな小説なの?と興味を持った方には入門向けとしてこちらもおすすめです。
また、入門向けと言う点では現在も連載が継続し、第二部のクライマックスに差し掛かろうとしている余湖・田畑版コミカライズもおすすめです。カラーライズ版も制作が進行しており、なかでもひときわ名作なのが「ラスト・ガール・スタンディング」なので、ここから入ってみるのもアリだと思います。
このライトノベルがすごい2027に向けた展望
恥ずかしながら今年はこのラノ2026にうっかり投票し忘れてしまったもので、今のうちに来年を見据えて準備をしておきたいワケです。
幸い、秋から年始にかけて好きな作品や楽しみな刊行予定が充実してましたので、今のうちにメモっておきたいと思います。
2010年代を駆け抜けたライトノベル冒険家 石川博品の最新作はアフリカの架空の国家を舞台に世代を越えて紡がれる、端正な格闘冒険小説!
人から生まれながら時に人の手に余り人を不幸にする、世界に満ちるすべての悪しき力を、ジュージュツで体を鍛えて乗り越えよう(※どうにもならん時もある)! ドージョーを通してファミリーも広がっていくよ!という亀仙流マインドに溢れているのが大好きですね。
ジュージュツの技名をナゲ・ガリ・キメ・ガタメに抽象化して絞り込んでおり、これによってスピーディーに進行する格闘描写とそうした文章技巧も見どころです。
黒留ハガネ『崩壊世界の魔法杖職人2』11月25日
このラノ2026でも投票期間締め切り直後の話題作としてプッシュされてましたね。実際たいへん面白いです。
ゼロ年代にちょいちょい見かけたオレ魔法SFの後継的な作品だと思うんですが、いわゆるなろう系における生産職無双と言う強い形式の採用し、さらに要所でサブヒロイン救済のドラマを置くことで、マニア向けでない普遍的なエンタメに仕上がっています。
救ったサブヒロをすぐ放流して舞台に残さなかったり、主人公と接点のない実力者が画面外で活躍しては画面外で死んだりするなど、抱え込む情報をコントロールして物語を身軽にしてるのがテクニカルでにくいですね。
寝舟はやせ『入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください2』11月29日
怪異満載のモンスターマンションに住む青年と怪談好きの隣人との日常を枠物語にした連作短編ホラー。
訳アリ心霊マンションとか百鬼夜行抄とか、おばけと生活を共にする作品って結構ありますが、本作はそれらの中でももう半歩踏み込んで主人公の精神の摩耗度が高く、引き返せないラインを越えた先、バッドエンド後の世界を垣間見せてくれるような奇妙で新鮮な面白さがあります。
そして2巻ではその主人公よりももっとダメそうな奴が登場!どうなっちゃうのか!?
本条謙太郎『汝、暗君を愛せよ2』12月10日
かつての架空戦記の生態系ニッチを受け継ぐ、なんというか"パラレル地歴フィクション"みたいな作品に同時多発で良作が生まれてて、本作もそれです。地理条件が西ヨーロッパまんまなのが特徴ですね。
18世紀フランスみたいな国の王様に転生した主人公が、言ってみりゃ歴史の自然な苛烈さを戦後日本人の感覚でスポイルする話なんですけど、主人公がめちゃくちゃ苦労してるのでついつい応援しちゃいます。将来的にもしも最悪のルートに入った時に備えて、奥さんが痛い思いをしないよう先んじて自分でギロチンを発明しておくエピソードとかお労しすぎる。
主人公の一人称語りがたいへんな名調子で面白さを増してるのと、あと作品中で最頻出する単語である国名"サンテネリ"の響きの良さなど、言語センスにも優れた作品だなと思いますね。
ロケット商会『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録Ⅷ』1月17日
同作者の『勇者のクズ』ともども、1月より同クール競演でアニメ放映が予定されている作品。
魔物の軍勢との人類の生存をかけた内憂外患の最終総力戦を描く軍事ファンタジーなんですけど、主人公たち懲罰勇者隊は自殺的任務に投入される超有能な無法者たちで、ファンタジー版の特攻野郎Aチームやエクスペンダブルズのよな作品です。
若気の至りとハードボイルドをいい塩梅で折り込んだ細身の近接超暴力男が主人公やってる点も、これぞアクションラノベの王統を継ぐ主人公像で評価高いです。
シリーズが続くことで脇役も充実してきてますが、一方で総力戦も煮詰まってきており、緊張感のある展開が続いています。新刊が楽しみ。
勇者のクズも面白いですよ!こっちはカラテ込みの異能バトル性がたくみ!
B・ボンド F・N・モーゼズ 本兌有 杉ライカ『ニンジャスレイヤー Age of Mappor-Calypse』1月30日
サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』の、フジキド編(トリロジー)の続編となる、マスラダ編"AoM(エイジ・オブ・マッポーカリプス)"がついに書籍化!
トリロジーのラストから10年、世界中の大都市にネオサイタマの異形のテクノロジーが波及した世界がAoMの舞台です。その一方で、基本的に単独行動・神出鬼没だったフジキドと違い、新主人公マスラダ・カイにはピザ屋のピザ・タキという本拠地が存在します。
広がったワールドと明確になったホームの対比が、AoMの特色でありトリロジーから強化された面白みだと言えます。
第1巻(シーズン1)のメイン敵組織が、ネットを介して私的に繋がっている邪悪ニンジャサークルなのも新鮮で、ひろく読まれて欲しいですね。
また、すでに刊行予定ラインナップからは削除されてしまいましたが、一度は12月の予定にタイトルがあった『かくて謀反の冬は去り』3巻にも期待しています。
古墳時代の日本がいきなり近代化させられたような特異な歴史世界をえがく架空歴史ファンタジーでして、その絶妙な違和感と味わいのある異文化描写がもう面白いんですが、ストーリーが動き始めるとこれがまたガツンと面白い政変ブラックコメディ、という傑作です。
石川博品の代表作である異文化コミュニケポリティカル学園ラブコメ「耳刈ネルリ」三部作と、上述の「汝、暗君を愛せよ」シリーズとのちょうど中間にある作品と言えるでしょうか。
その他ですと、このラノ2026に『辺境の老騎士』で知られる支援BISの新企画が動いている事が触れられていました。支援BISは世界レベルのファンタジー作家と認識しているので、こちらもたいへん楽しみです。
あとはとくだん刊行予定はないのですが、ゲーム世界転生ものの第一人者であるウスバ―の「ミリしら転生ゲーマー」シリーズ、職業倫理のしっかりした霊能力者たちの仕事ぶりを描くカクヨムホラーの秀作「よみごさん」シリーズ、韓国産の他種族冒険ファンタジーの大作「涙を呑む鳥」シリーズの三作は、出版されていないだけで小説の続きそのものは存在が確認されているので、続編の刊行を首を長くして待っています。
イラストレイター部門については、まだ個人的に強い思い入れのある作品はありません。
ただ、未読のシリーズですが、ダンまちの21巻はめちゃくちゃかっこよくて本屋に行くたびにびっくりしています。
また、1月末刊行のニンジャスレイヤーは、巻末に数十人分のラフ絵つきキャラ紹介が付くそうで非常に楽しみにしていますね。
あとtoi8が働きすぎていてもはや怖いです。
こんなところでしょうか。
まだ見ぬ傑作との出会いにも期待しています。2026年も良い年になりますように!
アイカツ無印×みんなのうた メモ
相互させて頂いてるKaoluさんが以前こんなことを言っておられまして。
アイカツみんなのうたカバー、という唐突な思いつき。
— ますたあ陽太郎4s (@kaolu4s) 2022年6月21日
風沢そら メトロポリタン美術館
一ノ瀬かえで 火星のサーカス団
というだけなんですが。
勇気一つを友にしては大空あかりでいいとして、サラマンドラは神崎美月か藤堂ユリカか。それが問題だ。
コンピューターおばあちゃんはきいちゃんでいいのかな?
— ますたあ陽太郎4s (@kaolu4s) 2022年6月21日
それから半年、たまにこの件について考えていたので以下にメモしておきます。
星宮:北風小僧の寒太郎 わりと迷いなくこれだなと思いました。かんたろー!という合いの手が聞きたい。
霧矢:手紙 拝啓十五の君へ これもすぐ決まりました。手紙と言えばですしね。
紫吹:ドレミの歌 「ドはドーナッツのド」からじゃなくて、「さあ おけいこを はじめましょう」からはじまるバージョンがあるんですけど、紫吹蘭と言えばいちご世代の鬼教官なのでそちらでお願いします。
有栖川:しっぽのきもち 愛の歌なので有栖川おとめ向き。ふわふわふりりん。
北大路:花 滝廉太郎のやつね。暮部拓哉のHANAもあってると思うけど。
一ノ瀬:火星のサーカス団 どんな曲だっけ?と思って聞いてみたら、ああこれかピッタリっすねと思いました。
神谷:忍者ネギ蔵 なんも思いつかないので「忍者 みんなのうた」で検索した。ラテンのリズムのかっこいい曲なので神谷しおんには向いてると思います。
三ノ輪:さとうきび畑 強いて前向きになったりしない純粋な悼みと鎮魂の歌が歌えるのってやっぱ三ノ輪だよなと思うので。
音城姉:切手のない贈り物 歌を届けたいというのがモチベーションになってるやつと言えば音城姉なので。
冴草:コンピューターおばあちゃん これはまあ、ですよね~といった感じ。
風沢:メトロポリタン美術館 意外と言われないと思いつかない組合わせだったかな。でもあってると思います。
姫里:この広い野原いっぱい 野原のイメージと、ひとつのこらずあげるっていうインフレした感じが姫里マリア向きじゃないかな。
音城妹:あなたの声 最初は気球に乗ってどこまでもがいいかなと思ってたんだけど、あれみんなのうたじゃないんですね。/あなたの声であれば、歌詞の内容的に音城姉へのアンサーみたいになるのでよいかなと思いました。
神崎:月のワルツ 月の歌ってみんなのうたにめっちゃたくさんあるんですけど、中でも有名かつ神崎美月にあいそうなのと言うとこれ。
夏樹:虹色ラブレター 美月さんとおなじ諌山実生の歌から。素直でフットワーク軽い善性が夏樹みくるに合ってるんじゃないでしょうか。
大空:勇気ひとつを共にして なるほど鉄の勇気を受け継いで明日に向かい飛び立ちそうなタイプ。
氷上:まっくら森のうた 藤堂→サラマンダー、神崎→月のワルツ、ときたら氷上→まっくら森ですよ。
新条:おはようクレヨン パッと思いつきましたけど、105話のGood morning my dreamからの連想ですかね。
紅林:トレロ・カモミロ ベタも良いところですが紅林はベタを受け止められる女。
天羽:アップル・パップル・プリンセス 谷山浩子シリーズから選んでも良かったけど今回はこっちで。
黒沢:ピースフル! ダンスって言うとこの辺かしら。
藤原:紅葉 北大路さくらが春なら藤原みやびは秋よ。
栗栖:ありがとう・さようなら 栗栖は友達を巻き込んでいくプロデューサー気質なやつなので卒業ソングが合う。
大地:ドナドナ 農家なので…。
白樺:夢待列車 なんかこの曲lucky train!じゃない?って思ったので。
堂島:テトペッテンソン おしりかじり虫はあえて避けてのテトペッテンソン。
マスカレード:赤鬼と青鬼のタンゴ あのふたりで聞きたいのと言えばでパッと思いつきました。
その他あれがあいつらで聞きたいとかあります?そうっすね…
ソレイユ:だんご三兄弟 これはまあ順当。
星宮×大空:黒ネコのタンゴ&アスタルエゴ 実は黒ネコのタンゴはみんなのうたではないようだけどこの際まあ良いだろ。どっちかというと星宮が黒ネコのタンゴ、大空がアスタルエゴ、という感じかな。
ぽわプリ:花は咲く これも実はみんなのうたではない。スタライクイーン勢には仕事をさせたいですね。
北大路×姫里:天地の声 合ってるけど、へたにひとりで歌わせるとやばい感じが出るのでデュエットで。
ラノベクラスタにも児童文学クラスタにもおすすめ!闇の魔法学校”スコロマンス”
YA児童文学とライトノベルの境界部分ってかなりあいまいなので、わたくしたまにYA児童文学をこのラノとか好きラノとかの人気投票で投票してまして(死票にはなるよ)、2020年には有沢佳映の『お庭番デイズ』を投票しましたし、来年になったら投票しようと思ってるのがスコロマンスです。
“スコロマンス”、もしくは「死のエデュケーション」シリーズは、『テメレア戦記』『ドラゴンの塔』などで知られるアメリカのファンタジー作家ナオミ・ノヴィクの手による小説で、第1巻『闇の魔法学校』(A Deadly Education)と第2巻『闇の覚醒』(The Last Graduate)の2冊が翻訳されています。
具体的にどんな話かと言うと、まずジャンルで言えばポスト「ハリー・ポッター」の学園ファンタジーです。本邦の作品だと『七つの魔剣が支配する』と同じジャンルの作品と言えますね。
また、悩めるティーンエイジャーの女性の一人称視点で物語が語られ、友情や恋も描かれるので、話の骨格は少女小説だと言えるでしょう。
ここまではオーソドックスな面白さの構造なんですけど、本作の特徴は舞台となる学校の設定と主人公のキャラクター性が両方ともめちゃくちゃ濃いことで、これにより異様な迫力を伴った作品世界が出現しています。
本作の舞台となるのは虚空に浮かぶ魔法学校“スコロマンス”です。
例えば先行作であるハリー・ポッターのホグワーツにも、トロールやら大蛇やら大きな犬やら、学校内でエンカウントするモンスターが登場していましたが、スコロマンスではホグワーツの100倍はモンスターがポップします。
しかも教室はもちろん、寮の自室やシャワー室、学食のビュッフェの中にも当たり前のようにモンスターが潜んでおり、常に油断なく目を光らせ、クラスメイト同士で協力し、対抗措置を確保したうえで生活をしなければなりません。が、にもかかわらず、スコロマンスで4年間を過ごし卒業するまでに、実に3/4の生徒が命を落とします。
およそ教育機関としての責任を果たしていないように見えるスコロマンスですが、恐ろしいことにスコロマンス外で魔法使いの子どもが育った場合の生存率はそれ以下なために、この状況が許されています。
おそらく、澤村伊智の比嘉姉妹シリーズで、かつて大家族だった比嘉家の人々が次々に妖魔の手にかかり、物語開始時点で姉妹ふたりを残して全滅しているのと同様か、さらに悲惨なことが、世界中の魔法使いの家庭で起きているのだろうと理解しています。
スコロマンスは、この状況を憂慮した強力な魔法使いたちが、子供たちを守るための結界で守られた教育機関としてつくられました。しかし、世界中から集められた魔法使いの子どもの存在は魔物たちにとってあまりにも魅力的で、スコロマンスの結界の周囲に強大な魔物が押し寄せるという結果を招きました。現在のスコロマンスの学校施設は、徐々に壊れていく設備や増えていく結界の抜け穴を修理することもままならぬまま、だましだまし使い続けられています。
その他、世界観の特徴としては、ハリポタや呪術廻戦などと同様に、現代社会の裏の世界として魔法使いの社会が存在している点や、スコロマンスの教育システムがすべて自動化されていて教師をはじめとした大人が存在しない点などがありますね。大人が出てこないあたり、十五少年漂流記や蠅の王のような学生漂流ものの変種ととらえることもできる作品と言えそうです。
一方で、これもまた面白いのが主人公の造形です。
ヒロインのエル(ガラドリエル)は、協力し合わねば生き残れないスコロマンスにおいて、学校内のはぐれ者となっています。
エル嬢はニューヨークをはじめとした有力派閥の出身生徒に取り入り、卒業まで生き延びた上で外の世界でも引き立ててもらいたいという気持ちは大いにあるのですが、適性があり習得している魔術が大規模破壊魔術に極端に偏っているため、自分を売り込む機会が全く訪れず、常に怒りと僻みを抱え込んで自室でじたばたしています。
また、この過酷な世界で生きてきたものとして、エル嬢は生きていくには酷薄でなければならないという規範意識を持っているのですが、それでいて彼女の心の奥底には生来の善性と高貴さ、他者への共感性が眠っているため、自己矛盾で常にイライラとしています。
ほんとうに常にキレ散らかしてるんですよね、エル嬢。
でもスコロマンスの世界は本当に最悪なのでその怒りは七割がた正当です(残りの二割が照れ隠し、一割が誤解)。
スコロマンスの世界は、常にモンスターの脅威にさらされた余裕のない世界で、魔法使いたちは大都市ごとに共同体をつくって互いの身を守っていますが、有力な共同体とその他の共同体には大きな格差が存在し、また有力な共同体同士の緊張関係もあり、それら大人の世界の歪みがスコロマンスの生徒たちの中に再生産されています。
スコロマンスの生徒たちの大半はきっと、こんな生き方したくてしてるわけじゃないと思いながら、状況に迫られて、自分たちの醜さから目をそらして生きているんだと思いますが、そうした学生たちとエル嬢の生き方の対比、そして変化が、本作の見所になっていると思います。
エル嬢を見ていて連想したキャラクターとしては、ぼっちと言う点ではわたモテの黒木智子や僕ヤバの市川京太郎や俺ガイルの比企谷八幡、常に苛立っているという点では魔術士オーフェンのオーフェンや勇者刑のザイロあたりがありますね。あと学パロになったら夕景イエスタデイみたいになるんかなあなどとも思いました。
ほんとうに面白いシリーズで、児童文学クラスタにもラノベクラスタにもおすすめです。
三部作構成の完結第3巻も原作は2022年中に出版されているため、いずれ3巻の日本語訳も出るものと思われます。2巻ラストの次巻へのヒキも鬼だったので、楽しみで仕方がないですね。
失われた傑作『ブラックロッド』、復活
今年の7月に最終巻が出たヒロアカの外伝『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』の原作担当をしている古橋秀之(敬称略)は本来は小説家でして、近年だとSFショートショート集『百万光年のちょっと先』を2019年に出版したほか、主にライトノベルレーベルでたくさんのすぐれた作品を書いています。
古橋秀之は、作品の質の高さ、その割に売り上げには繋がっていなさそうな不遇さ、同門*1の秋山瑞人(『E.G.コンバット』『猫の地球儀』『イリヤの空、UFOの夏』など)とのセット扱いなどから、00年代にラノベが好きだった者にとっては深く記憶に刻まれた作家なんですが、その古橋秀之の代表作とされることが多いのが、『ブラックロッド』シリーズ三部作(ケイオスヘキサ三部作とも)です。
ブラックロッドはまさに伝説のラノベと呼ぶにふさわしい作品で、どの辺が伝説かと言うと、もちろん面白さ・評価の高さ・語れるポイントの多さ・後進への影響みたいな点でも伝説的なんですけど、そもそも入手難易度が高いんですよね。
ラノベがすぐ絶版になるのはみなさんご存じかと思いますが、ブラックロッドはそこそこ古い作品なこともあって電子書籍化しておらず、そのうえ3作目のブライトライツ・ホーリーランドはAmazonの中古価格で5,000円を超えています(2022/12/11現在)。そりゃあ買おうと思って買えない値段ではないですし、図書館で取り寄せて読む方法もありますが、やはり未読の人がわざわざ読むにはハードルが高い。
ブラックロッドはマジで面白いので、名前を耳にすることはあれど実際に目にすることはないツチノコみたいな作品になっている現状は大変遺憾に思っていたのですが、ようやく来年2023年2月5月、ブラックロッドが復刊されることになりました(復刊の話自体は2021年からありましたけど、立ち消えになることもありうるなと、その時点では完全には信用してませんでした)。
下記が作者による進捗状況公開サイトです。
どうやら3部作を合本版として立派な装丁のハードカバー1冊にまとめるようですね。
電書化についても、物理書籍の刊行から数ヶ月の間を開けてからにはなるようですが、行う方向で詳細検討中のようです。
さて、では具体的にブラックロッドがどんな作品なのかと言いますと、まずジャンルとしては、しばしば「オカルトパンク」と説明される作品です。
異常発達した魔術が文明の礎になった異形の近未来における、積層魔術都市「ケイオス・ヘキサ」を舞台とした、アクションと都市描写をかっこいい造語が彩る作品で、他作品を例に出すと『血界戦線』とか『ニンジャスレイヤー』みたいなやつです。
また、ラノベ史上の位置づけで言うと、電撃小説大賞(当時は電撃ゲーム小説大賞)の第2回大賞受賞作品ですね。
現在ラノベレーベルの最大手として君臨している電撃文庫ですが、レーベル初期に持っていた主なアドバンテージがふたつあって、ひとつはちょうどデザインワークにパソコンが本格導入された時期だったことによる垢ぬけた装丁、もうひとつがレーベルの新人賞である電撃小説大賞の異常な打率の高さです。
第2回大賞受賞作であるブラックロッドは、電撃文庫のブランド力の礎を築いた作品であり、またその後の『86-エイティシックス―』や『錆食いビスコ』のような電撃文庫の設定濃い目のSF活劇路線の起点と言えるでしょう。
ブラックロッドは非常に個性豊かな作品ですけど、とはいえコンテンツを広く見渡したり、あるいはオカルトとサイバーパンクを要素ごとに分けて考えれば、『血界戦線』『ニンジャスレイヤー』『斬魔大聖デモンベイン』といった後発作、あるいは『ニューロマンサー』『魔界都市〈新宿〉』『帝都物語』『仙術超攻殻ORION』『リュカオーン』といった先行作が思いつきます。
そうした同系統の作品と比較した時のブラックロッドの魅力って何かなと考えてみると、思いますに、三部作なところですね。
1作ですべてが完結する単巻の作品でなく、大きなドラマの存在する長編作品でもなく、それぞれにテイストの異なる三つの作品が存在して、それぞれの方向から作品世界に生きる人々の姿を照らし出しているところに、このシリーズの良さがあります。
ということで、復刊をひかえているので軽くですが、三部作それぞれの特徴を見てみましょう。
『ブラックロッド』は、魔都ケイオス・ヘキサで暗躍する魔人ゼン・ランドーを、名前と感情を封印された公安局の魔導特捜官“ブラックロッド”と、私立探偵ビリー・ロンが追う、と言う犯罪捜査ものです。
猥雑な都市描写のケレンに目が行きがちですが、練りあげられたプロットやガジェットの活かし方の巧みさに真の価値があるというか、それらはすべてアイデアを使う時の練りこみがすごいという同じ美点の表出の仕方が違うだけ、という感があります。
『ブラッドジャケット』は、大規模な吸血鬼禍がはじまらんとしているケイオス・ヘキサの下層社会を舞台とした墜落系ボーイミーツガールです。
若者に向けた暗黒青春小説としての作品の雰囲気づくりと、語彙選択は、前作から更なる洗練を見せています。
それでいてメインヴィランの“超弩級聖人”ハックルボーン神父のあまりのパンチの強さも大きな魅力ですね。
『ブライトライツ・ホーリーランド』は、都市の終わりを目前にしたケイオス・ヘキサ最後の日々を、最悪のトリックスター存在 “嗤う悪霊”G・G・スレイマンを軸に描く群像劇です。
冒頭の、嵐の魔神〈百手巨人〉vs機甲折伏隊の切り札・重機動如来〈毘盧遮那〉の決戦を皮切りにパワーワードは三部作最大量となっています。
しかし、本作の最大の見どころは、そうしたパワーワードを支え、基本は端的で過不足なく、しかしここぞで詩情をみせる文章力ではないでしょうか。
なお、復刊に際して「ブラインドフォーチュン・ビスケット」と改題されるとのことです。
どんなラノベもみなジャンルの生んだ成果であり、おいそれと失われてはならないものですが、ブラックロッドはスーパー傑作なのでとりわけ強くそう思います。
アクセス不可領域として失われていたブラックロッドの達成が、今回の復刊で再び触れられるようになることは本当に喜ばしいと思いますし、そもそもめちゃくちゃ面白いので、2月5月になったらぜひみんな買って読んで話題にしてみてください。
(それはそうと『タツモリ家の食卓』も『ブラックロッド』と同等に好きなので、ブラックロッド復刊の勢いでこちらも復刊・電書化して、バルシシア・ギルガガガントス15‐03Eが大人気になり、シリーズの刊行が再開して4巻が出て完結もして、ついでに劇場アニメ化もすればいいのにと思います。みんなバルシシア殿下を知るんだ。 )
*1:法政大学 金原ゼミ
「クララ白書とかマリみてみたいなやつないの?」「最近だとお庭番デイズかな」他
相変わらずニンジャスレイヤーばっかり読んでる生活を送っているのですが、甘いものばっかり食べてると今度は塩っ気が欲しくなる理屈で、平行して少女小説とかが読みたくなるわけです。
少女小説といってもいろいろあるわけですけど、とりわけ狭義の少女小説というか、 氷室冴子『クララ白書』とか今野緒雪『マリア様がみてる』みたいなやつですね、そういうのって少女小説レーベル内だと意外なほど見つからないので、その周辺も広く探していく事になります。
さて、ちょっと前までだと「クララ白書みたいなやつない?」と言われたら「ユーフォの原作読もうぜ」って言ってたと思いますし、その前だと文化部棟青春コメディ『マイナークラブハウスへようこそ!』を挙げてたと思います。
じゃあ今は?となると、今年どんぴしゃの作品が出版されました。
有沢佳映の『お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記』です。
逢沢学園女子寮では「ピープル・ヘルプ・ザ・ピープル」を合い言葉に掲げて、学校内での互助を寮の文化として継承しているのですが、それにあたっての情報収集担当者をとくに「お庭番」と称していました。
中学1年生の戸田明日海(アス)は、ルームメイトの2人とともにお庭番を拝命する事となり、学校のトラブル周辺をうろうろしては役にたったり、たたなかったりする事になります。
寮を舞台に、先輩から変なミッションを押しつけられ、ルームメイトとともに奔走する様はまさにクララ白書・マリみての正統後継だと言えますね。
また、その他の特徴としてはたいへんな登場人物の多さがあります。
巻頭に寮生50人を含む登場人物紹介リストが配置され、その後はたいした説明もなく物語の中に脇役・端役として顔を出してくるので、読んでる間は巻頭の登場人物リストを首っ引きし続けることになります。
でもそのぶんだけ、徐々に名前とキャラが一致してくるにつれて物語から受け取れる面白さが上昇していきますから、ただでさえ品質の高いエピソードである第4章(下巻後半部分)は相乗効果でべらぼうに面白いです。
また、中1の主人公から仰ぎ見る先輩達に、たまさかに年齢相応の子供っぽさが垣間見えるところも味わいが深いです。
有沢佳映はどっちかというと寡作な作家ですけど、他に出版されている、それぞれの事情で修学旅行に行けなかった居残り組のささやかな冒険『アナザー修学旅行』と、極めて高度なリアル小学生描写が見ものな問題児アベンジャーズ『かさねちゃんにきいてみな』はどちらも良い作品で、力量のある作家さんである事は間違いないですし、『お庭番デイズ』はある種の風采・風格のある作品だと思うので、是非とも続編に取り組んで欲しいと思うところです。
さて、1作だけしかおすすめできないのであればお庭番デイズですけど、もっと読みたい人のためにどんどん挙げてみます。
レギュレーションは、10代の女性の学生が主人公の、超常要素なしの面白かった作品とします。
まずは『若おかみは小学生!』の原作でも知られる、大人気作家令丈ヒロ子作品から『かえたい二人』と『なりたい二人』の姉妹編。
『かえたい二人』は、転校を機に「普通」になりたいと思ってる穂木と、クラスでぶっちぎりで浮いている陽菜が、お互いの立場を守るために協力する事になり・・・という女子ふたりの紐帯を描いた話です。
『なりたい二人』は、本当はひと一倍おしゃれに興味があるけど自信が無くて背中を丸めて生きてきたちぇりが、ぽっちゃりした幼なじみのムギと一緒に学校の課題について調べることになり、そのなかで気持ちを整理し自分の夢がなんなのかを捉えていく・・・という話ですね。
出版順は『なりたい二人』の方が先なんですけど、まずキャッチーでエンタメ性の高い『かえたい二人』を読んでから、次に心の変化が良く書けててラストの味わいが深い『なりたい二人』に逆流するのもおすすめできると思います。
生まれたての子鹿みたいだったちぇりが、ムギのIKEMENムーブにさらされ続けた結果ついに捕食者としての片鱗を見せるの元気があってよろしいなあと思います。
続いて『かえたい二人』『なりたい二人』と同様にイラストレーターの結布が表紙絵・挿絵をつけている『トリコロールをさがして』。作者の戸森しるこは比較的書く手が速いほうの作家だと思うんですけど、書いてる作品がマジで全部面白いのですごいです。大作家か?
『トリコロールをさがして』は、2歳年上の幼なじみが最近になっておしゃれに目覚めてしまい、すっかりかまってもらえなくなってしまった事が不満な小学4年生を主人公に据えた物語。
中学年以上向けの本なので字がでっかいんですけど、必要な文章が必要な分量で、必要な物語が必要な頁数で描かれていて、全てが丁度良く出来てます。
唯一、挿絵の量だけは過剰なんですけど、それがまた「結布イラストをこんなに拝める!」となって良いです。
隠喩的な演出もバシバシ決まるし、物語の末尾において姿勢を良くして大股で未来へ進んでいく主人公の姿がなにより良いですね。
物語の終わりにあらわれる「姿勢の良さ」というと、思い出されるのが『よろこびの歌』です。
『羊と鋼の森』で本屋大賞受賞作家となった宮下奈都の音楽小説で、新設の私立校に集まった女子学生たちを描く連作短編で、それぞれに挫折を抱えながら徐々に前向きになっていく様は、冬の日だまりのようにじんわりと暖かいです。
次に挙げる2作品はともに学級内闘争を描いた作品です。
『さくらいろの季節』は、かつての親友が学級内政治を支配しているクラスで、地味な善人という立場でおとなしく生きてきた主人公が、転校したもうひとりの親友や孤高の転校生との関係の中で、自分はどう動くべきかすごい悩ましい、と言う話です。
作者はこのデビュー作1作しか出してないので、ぜひまたなんか書いて欲しいですね。
『王妃の帰還』は、公開裁判の末に頂点から転落したクラスのプリンセスを、成り行きで自分たちのグループに受け入れる事になって正直迷惑している4人組が、厄介払いのために人気回復大作戦を画策する、という話です。
『さくらいろの季節』は少女趣味、『王妃の帰還』はガールズ趣味とでも言うような読み味の違いがありますが、両作品ともに非常にドラマ性の高い盛り上がる作品です。『王妃の帰還』はとくにジェットコースター感が強いですね。
最後に、これもまたひとつの正統後継、第1回 氷室冴子青春文学賞 大賞受賞作『虹いろ図書館のへびおとこ』。
学校でいじめられた主人公が町の図書館に入り浸る話で、読んでて猛烈に小学生に戻って図書館通いをしたくなります。
抑制されたメイン部分から、一転してエピローグがダダ甘のヘテロだったりするところも好きですね。
さしあたりこんなところでしょうか。
有沢佳映と戸森しるこは少年主人公ものも含めて書いてる本全部が面白いので、もしあなたが読んでみて気に入ってお金と時間があるなら、どんどん読んでいくと良いと思います。
近日刊行作品だと、12月刊の戸森しるこ『すし屋のすてきな春原さん』と村上雅郁『キャンドル』、それにもちろん11/19の『大人だって読みたい!少女小説ガイド』が楽しみですね。
ガンダムビルドダイバーズRe:RISEについて/良作における最上
本日最終回が公開となる『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』がめちゃくちゃ面白いので、見ていない人のためにどんな作品なのかここに紹介しておきます。
概要と舞台
『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』(以下リライズ)はガンダムビルドシリーズの4作目にあたります。
ガンダムビルドシリーズでは、1作目・2作目が描いたガンプラバトルという枠組みに、作品世界を一新した3作目ではそこにオンラインRPGと言う要素が追加されました。
その3作目の同一世界の2年後を描いた本作は、更に「ゲームの世界が本物の異世界と繋がってしまった」という導入による異世界転移もの という要素を加えています。
異世界転移ものと言う類型は、web小説界隈とそこからのメディアミックスによって、ここ数年にわたって流行が続いているジャンルです。
一方で異世界に転移して巨大ロボに乗るアニメというのは、『聖戦士ダンバイン』や『魔神英雄伝ワタル』の系譜に連なるものであり、リライズは流行と由緒との二つの文脈に支えられて存在している作品と言えるでしょう。
紛い物たちの再起と隔絶を超える祈り
リライズという作品の物語を突き動かしているのは、なんらかの不本意な状況にある人物たちの再起の物語です。
これはもちろん主人公ヒロトもそうで、これまでのビルドシリーズの主人公が明朗で挑戦心あふれたいかにもな少年向けエンタメの主人公像を踏襲していたのに対して、ヒロトは心の傷を抱えてひとり旅を続けてきたダウナーな人物です。
また、ヒロトを含めた4人の仲間たちは、成り行きから前作の主人公チームと同じビルドダイバーズというチーム名を名乗る事となります。これがまた、彼らがヒーローたり得ない紛い物の寄せ集めであるという事を強調してきます。
そして、紛い物のヒーローが本物のヒーローに、バラバラだった4人がひとつのチームになっていくのと前後しながら、作り物だと思い込んできた異世界が本物であった事があきらかになり、おもちゃのガンプラが本物の戦闘を行い、さまざまな人物がそれぞれの再起を行います。
一方で、リライズという作品の世界を彩っているのは、隔絶を超える出会いや祈りです。
リライズの作中世界の面白いところは現実世界・ゲーム世界・異世界という3つの世界の存在です。そして、隔絶を超える出会いや祈りがもつロマンチックさが、本作では繰り返し繰り返し描かれます。
この隔絶は、ゲームプレイヤーであるビルドダイバーズと異世界の民フレディやマイヤといった世界間の隔絶、あるいはエルドラ地表と月面の敵本拠地、現実世界に戻ると互いにそこそこ遠方に住んでいるビルドダイバーズのメンバー達や、ヒロトの幼なじみで弓道部員のヒナタが的にめがけ放つ矢、漁師の息子カザミと船上の父といった遙かな距離としてあらわれます。
また、ヒロトの抱え込んだ事情に踏み込みきれないヒナタや、脚本家と翻訳家としてそれぞれの仕事を抱えるヒロトの両親など、物理的な距離は近いはずの者同士であっても、そこには隔絶の存在と、それを超えていくものがあること描かれています。
そして孤独な旅を終えて再起し、「誰かのために頑張れる」者になれたヒロトのもとで作品の縦軸と横軸が交差し、3つの世界で出会ったすべての人の思いや願いがつながっていくことになるのです。
良作における最上
さて、twitter上などで観測できるリライズの感想からは、本作が2期(15話以降)ないしは1期終盤から面白くなってくる、あるいは20話から盛り上がってくる、スロースタートな作品であるとの評判がうかがえます。
確かに序盤のエンタメ度合いは抑えめでした。しかし1期がつまらなかったのかというとそれは違うと思います。
リライズという作品は描写が丁寧で全体の計画もしっかりしているのが特徴です。
そのため序盤の個別のキャラクター担当回も、パル編の4~5話、カザミ編の6~7話、ヒロト編の8~9話と、複数話をセットでエピソードをつくる事が多く、キャラクターが掘り下げられる反面、盛り上がりとしてはタメの回が出来てしまう事は良し悪しあったとは言えるでしょう。
ですが、とにかく全体の計画がしっかりしている作品なので、無駄な描写はまるでなく、一貫してある程度の面白さが維持されています(ただし初期カザミの迷惑ぶりがキツすぎる、みたいな瞬間はあるかも)。「あえて言及するほど盛り上がってるわけではないけど、その割に不思議なほど毎週楽しみにしてるな」というのが10話あたりでの自分の感覚でした。
これが、1期クライマックス12話を受けた13話オフ会回あたりから、明らかになった物語の本筋とそれに挑む主人公たちのチームの姿勢が結びつき、完全に面白くなってきます。とくにお調子者のカザミの変化は本当に良く描けていて、作品の見所と言えるでしょう。
そして、19・20話のヒロトの過去編(あまりにもむごい)を皮切りに、チーム全体の成長を描く事で終盤まで温存しておく事が出来た各種の大ネタがバシバシ決まるようになると、めちゃくちゃに面白くなります。
そんな終盤に至っても、序盤から変わる事無く人物描写やモチーフの取り扱いは精緻に行われ、結果作中に描かれてきた全要素が連結して作品を見る者の感情を揺さぶります。
アクションのある回は死ぬほど盛り上がりますが、無い回も変わらぬ満足感があります。
リライズは間違いなく傑作ですし、すでにして名作であるといってもかまわないと思います。
ただ、めざましい新規性はなくとも良質で良心的で、作劇におけるごまかしがなく、序盤からの丁寧さを一貫したまま終盤になっての盛り上がりがすごくて、更に言うと前作ファンへの目配せも効いていて、なおかつここに来てプラモの売れ行きも急上昇しているリライズという作品を評するにあたって、少々持って回った言い方を許してもらえるのであれば、「良作というカテゴリーにおける最上」という表現を使いたいですね。
そのほか言いたい事はありますか?
リライズの物語要素は、思い返してみるとすごく大長編ドラっぽいです。
そもそもSFマインドのある少年主人公ものという生態系上の地位が共通してはいるのですが、それにしても獣人の住む別世界で戦争に巻き込まれるという大枠の部分で動物惑星、おもちゃが本物の兵器として使われる点では宇宙小戦争、隔絶を超えるロマンチックという点では宇宙開拓史を思わせますし、品質においても互するものと言えると思います。
前作の要素が作中で出てきますので、可能であれば前作も押さえた上で見るとなおのこと良いとは思いますが、一方でこのリクくんというのは前作主人公なんだなと言う事だけわかっていればそれで十分にリライズの物語を楽しめるだろうとも思います。
おすすめできる良い作品で、見ればきっと面白いので、縁があれば是非見てくださいね。






















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